南北首脳会談と魯迅の詩

 韓国と北朝鮮の首脳会談が行われた直後に中国外務省が発表した報道官の談話に驚きました。そこには文豪魯迅の詩の一節が盛り込まれていたのです。
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 「渡尽劫波兄弟在 相逢一笑泯恩仇」。荒波を越えれば兄弟がいて、会って笑えばうらみは消える、といった意味のようです。なるほど、この歴史的会談にふさわしい詩です。
 この詩は魯迅が植物学者の西村真琴氏(1883-1956年)に贈ったものです。西村氏は長野県の出身。北海道大学水産学部の前身である水産専門部の教授を務め、マリモ研究で著名な人物です。北海道帝国大学の同人誌「さとぽろ」の編集制作にも活躍しました。日本で初めての人間型ロボット「学天則」の制作者でもあります。驚くほど多才で多彩な活躍をされた学者でした。名優西村晃さんのお父上です。
 西村氏は上海事変の折に上海に赴き、戦災孤児らの救援にも力を尽くしました。魯迅はそんな西村氏に敬意を抱き、詩を贈ったのだそうです。
 報道官談話は全文百五十字ほどで、詩の出典も魯迅の名もありません。中国では知られた詩なのでしょうか。歴史的会談を歓迎する談話にこの詩をそれとなく織り込む中国の外交当局。日中関係の改善に向けたメッセージを込めていると見ることもできるでしょう。

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by haterumarisiri | 2018-06-05 14:42 | 中国 | Comments(0)